画期的なスクリューインペラー渦巻きポンプ(吸込みスクリュー付渦巻きポンプ)の誕生
ヒドロスタルポンプは特徴的なスクリューインペラー(羽根車)を備え、無閉塞性・非破壊性・高効率という特徴を持った製品です。
その誕生は1950年代の南米ペルーにさかのぼります。当時の水産業界が頭を抱えていた問題は、彼らが本拠地としている港湾の揚魚設備の整備が遅れていたことです。漁獲物のイワシを生きたまま傷付けず、安全に陸揚げする為には護岸工事を含めて莫大な費用の投資が必要とされていました。このような中で、漁船から加工工場や貯蔵庫にイワシを搬送したり、大型漁船が漁網から魚を生きたまま無傷で揚魚する為に開発されたポンプがヒドロスタルポンプです。
このポンプを開発したのはスイス人技術者でヒドロスタル社の創設者であるマーティン・シュテーレ氏です。シュテーレ氏がイワシの揚魚ポンプの開発について打診されたのが1955年。
その時のお客様からの要求は、
- ・漁師や漁業に携わる作業員の操作性が容易
- ・構造が単純且つ頑丈である
- ・更に無傷で揚魚可能なポンプ、でした。
忍耐強くしかも独創的発想をもったこのスイス人技術者は2年後の1957年には早くも世界で初めてのスクリューインペラー渦巻きポンプ(吸込みスクリュー付渦巻きポンプ)であるヒドロスタルポンプを完成させました。
このヒドロスタルポンプの導入により、ペルーの水産業は飛躍的な発展を遂げ、世界有数の漁獲量を誇るまでに発展しました。 ペルーでの大成功を受け、その後ヨーロッパを始め、アメリカ、アジア、アフリカなど全世界でヒドロスタルポンプが販売されるようになりました。日本ではラサ商事が1980年より販売を始め、その後1982年から大平洋機工での国産化を開始しました。
日本におけるヒドロスタルポンプ
スクリューインペラー(羽根車)を持つヒドロスタルポンプには、通常の陸上型と気中連続運転が可能な水中型があります。
日本では陸上型から導入が始まり、当初は非破壊・無閉塞性・繊維物の高通過性の特徴を生かして製紙工場や化成品工場等で採用されました。その後、1980年代前半には吸込スクリュー付渦巻きポンプとして、全国の下水処理場に順次採用され、汚泥移送で活躍するようになりました。
1985年からはヒドロスタル社の特許技術で、ポンプの回転速度を変えずに流量制御をするプリローテーション技術を応用した、予旋回槽付マンホールポンプシステム(プレロスタルマンホールシステム)を日本で独自に開発し、自治体向けに本格的な販売を始めました。その後このユニークな技術を国内のマンホールポンプメーカー各社に開示し、予旋回槽付マンホールが全国各地へと急速に広がって行きました。この技術によりマンホール内の残留物や残留汚水を大幅に減らし、スカムの発生や沈殿物の堆積などによる臭気及び硫化水素の発生を抑え、マンホール内を清潔且つ安全な状態に保つことが出来るようになり、日本国内の衛生環境の改善に大きく貢献することが出来ました。現在ではこのアイデアが国境を越え、世界各地でマンホールのスカム発生防止技術として採用されています。
ポンプ活用事例
「非破壊」、「無閉塞」の特徴を生かした採用事例
ヒドロスタルポンプの「非破壊」「無閉塞」という特徴から、食品工場や製紙工場、上下水道設備など様々な用途で使用されており、採用事例は多岐に亘っています。
陸上型ヒドロスタルポンプの採用例
分野 | 移送対象物 | 採用ポイント |
---|---|---|
食品工場 | カット野菜、大豆、アスパラガス、梅、海草、トマト、みかん、カニ肉、剥きエビ、ゆで卵他 |
非破壊性、無閉塞性、 高効率による省電力化 |
化学工場 | ペレット、フロック、結晶、イオン交換樹脂他 |
非破壊性、無閉塞性、 高効率による省電力化 |
下水処理場 | 初沈汚泥~濃縮汚泥の各種処理工程、長距離圧送、し渣移送、スカム移送他 |
無閉塞性、 高効率による省電力化 |
し尿処理場 | 高負荷循環ポンプ、汚泥処理他 |
無閉塞性、 高効率による省電力化 |
湿式不織布 | ファンポンプ、白水、パルパー、スーパークロン、マシンチェスト、クーチピット、配合他 |
無閉塞性、 高効率による省電力化繊維のよれ防止 |
製紙工場 | チップ移送ポンプ、パルパー引抜き、ヤンソンスクリーンリジェクト、排水(チップ・リジェクト等混入)他 |
無閉塞性、 高効率による省電力化 |
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水中型ヒドロスタルポンプの採用例
分野 | 移送対象物 | 採用ポイント |
---|---|---|
各分野の民間工場 | 場内の汚水等排水ピット設備他 |
非破壊性、無閉塞性、 高効率による省電力化 |
汚水、汚泥、雨水、廃液排水及び廃棄物移送 | ||
上水道設備 | 河川からの取水及び沈砂池設備の揚砂排水 |
無閉塞性、省電力化、 気中連続運転 |
下水処理中継ポンプ設備 | 下水処理場(分流及び合流式)への汚水・雨水圧送設備 | 無閉塞性、気中連続運転、残留物・汚水極少化、臭気対策、硫化水素対策、省電力化 |
マンホールポンプ場・中継ポンプ場・雨水滞水管内の汚水・雨水圧送用(槽外型含む) | ||
下水処理場 | 沈砂池設備(揚砂ポンプ) | 無閉塞性、気中連続運転、省電力化 |
水処理設備(スカムピット排水ポンプ) | 無閉塞性、気中連続運転、残留物・汚水極少化、臭気対策、硫化水素対策、省電力化 | |
各設備浸水対策用床排水ポンプ(槽外型含む) | 無閉塞性、省電力化、気中連続運転、 | |
ビルピット排水 | ビル・マンション等の地下ピットから汚水を公共下水道管へ排水・圧送 | 無閉塞性、気中連続運転、残留物・汚水極少化、臭気対策、硫化水素対策、省電力化 |
道路設備 | アンダーパスにおける浸水対策用雨水排水 | 無閉塞性、気中連続運転、省電力化 |
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BCPや水害対策として注目
また新たな分野として、現在洪水や集中豪雨等によるインフラ設備や各種施設への水害対策として下水道BCPや道路BCP向けにヒドロスタル水中ポンプが注目されています。一般的な水中ポンプと異なり、ヒドロスタル水中ポンプは24時間365日の気中連続運転が可能です。その為、平時は通常の陸上型ポンプと同じように使用することも可能で、万一施設や設備が災害で浸水被害にあっても運転の継続や早期の復旧が可能になります。このようなことから、ヒドロスタル水中ポンプを陸上設置(槽外型)として下水処理施設や地下施設に設置する事例が近年増えています。
進化し続けるヒドロスタルポンプ
前述の通り1980年より当社がヒドロスタルポンプの販売を開始して以来、多くの国内ポンプメーカーが吸込スクリュー付渦巻きポンプとして類似のポンプの製造販売を始めました。しかしそのような国内ポンプメーカーのほとんどがこのポンプの事業から既に撤退してしまいました。撤退の理由は様々でしょうが、一つの大きな理由として、ヒドロスタルポンプのスクリュー羽根車の設計・形状が非常に完成されたものであり、且つ製造に際しては経験やノウハウが必要である為、単純な模倣では改良の余地が少なかったという面があるのかも知れません。
一方、我々ラサ商事及び大平洋機工は、様々なニーズに応えるべく、羽根車のクローズ化による通過性・非破壊性の向上、ポンプ効率の改善、軽量化、保守・整備・洗浄を容易にし工具を使わず分解組立ができる機構の開発など、完成度の高いヒドロスタルポンプへの更なる改良・改善並びに用途開発に日々取り組んでおり、吸込みスクリュー付渦巻きポンプのパイオニアとして、これからもチャレンジし続けて行きたいと考えています。
上記に掲載した採用例以外でも、まだまだヒドロスタルポンプの特徴を生かす潜在用途は沢山あると考えております。新しい用途についても是非当社にご相談ください。
ラサ商事の取り扱うヒドロスタルポンプ
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ラサ商事のワーマン®ポンプ
- 接液部品の材質選定により、あらゆる液体及びスラリー移送が可能です。
- ポンプ構造が簡単で、分解・組立などのメンテナンスが大幅に省力化できるため、整備に手間がかかりません。
- 羽根車・ライナー等は耐摩耗性に優れています。
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ワーマン®ポンプ関連製品
- ケミカルスラリーポンプ
- 耐摩性スラリーポンプ
- 自吸式スラリーポンプ